DENON AH-C830NCWは、日本の音響メーカー「デノン」初の完全ワイヤレス(TWS)イヤホン。
同社のサウンドマスター山内慎一氏がチューニングし、Hi-Fiオーディオ機器と同じくデノンのサウンドフィロソフィーである「VIVID & SPACIOUS」を実現したという本製品は、昨今のトレンドにも乗っかり、アクティブ・ノイズキャンセリング、外音取り込み、タッチコントロールにも対応しています。
筆者は最近、完全ワイヤレスイヤホンに凝っているので、その音質を是非確かめたいと思い実機を購入しました。それでは、以下レビューをお届けします。

ジャンプできる目次
DENON AH-C830NCWの特徴
AH-C830NCWの特徴を「良いところ」「良くないところ」に分けてまとめました。
良いところ
✅デノン初の完全ワイヤレスイヤホン
✅サウンドマスター山内氏がチューニング
✅スティック型インイヤーイヤホン
✅アクティブ・ノイズキャンセリング搭載
✅周囲音ミックス(外音取り込み)機能搭載
✅タッチコントロール機能搭載
良くないところ
✅専用アプリなし
✅コーデックはSBC/AACのみ
✅再生時間が短め(ノイキャンONでケース込19時間)
✅ワイヤレス充電非対応
DENON AH-C830NCWのパッケージ内容をチェック
AH-C830NCWのパッケージはモノクロの配色。シンプルですが、ちょっと地味な印象です。
付属品は、本体、ケース、充電ケーブル(Type A to C)、イヤーピースS/M/L(Mは本体に装着済)、解説書、保証書でした。
DENON AH-C830NCWの本体をチェック
マットな質感のケースは質素に見え、ケース上部の「DENON」のロゴも非常にシンプルな印象を受けます。なお、カラーはブラックとホワイトの2種類で、筆者が購入したのはブラックです。
ケースを開けるとイヤホンがお目見え。
インイヤー型のイヤホン本体はグロス加工されており、ピアノのような光沢感があります。
ドライバー搭載部分からスティック部分はツヤツヤで、指紋は目立ちます。
イヤホンのスティック部分の先端はシルバーの装飾がされていました。単なるシンプルに終わらないデザインとなっています。
また、イヤホンケースは手のひらサイズで特に大きくもなければ、小さくもありません。
DENON AH-C830NCWを実際に使用してみての感想
とにかく音質が凄い。音場も広い
AH-C830NCWはとにかく音質に拘った製品です。対応コーデックはSBC/AACだけですが、そんなことはどうでもいいレベルで音質が良いです。

11 x 10 mmの楕円形ドライバー搭載のためか、独特の形状
サウンドマスター山内氏がチューニングを施したというだけあって、低・中・高音域すべてに奥行きがあり、一つ一つの音がリアルに聴こえます。特にピアノ、アコースティック・ギターなど生楽器や、女性ボーカルとは相性がよく、非常にクリアで解像感も高いです。
また、音場もかなり広いように感じられ、とても1万円台後半のワイヤレスイヤホンとは思えません。ソニーのWF-1000XM4のような3万円クラスのイヤホンに匹敵する音質だと思います。

快適な装着感。耳の圧迫感が少ない
AH-C830NCWは、11x10mmの独特な楕円形ダイナミックドライバーを搭載しているためか、本体形状もちょっと独特です。
しかし、これが意外にも耳への収まりが非常に良く、圧迫感もあまり感じません。また、少々頭を振ったくらいでは簡単には外れません。

通話品質・外音取り込みは○。ノイキャンは高音の残りが少し気になる
AH-C830NCWは、3つのマイクを搭載し、ビームフォーミング技術、エコーキャンセル技術により優れた通話品質を実現。また、外音取り込み(デノンが言う周囲音ミックス機能)とアクティブ・ノイズキャンセリングの機能を搭載しています。
片側3つ(計6つ)のマイクを搭載し、優れた通話品質を実現
実際に使ってみた感想は以下の通りです。
通話品質は問題なくクリアでこちらの声も相手の声もよく聴こえます。
外音取り込みについては、前周囲の環境音や人の声などがバランスよく増幅されている印象で好感が持てました。価格相応の性能があると思います。
アクティブ・ノイズキャンセリングについては、人の声や低~中音域の雑音はしっかりカットされているものの、一方でサァーッという高音がわずかに残る感じがあり、ジムの器具の音や電車の音などは少し気になりました。
アクティブ・ノイズキャンセリングは、1万円弱の製品でも他に優秀なものがあるので、これに期待するとちょっと微妙です。

タッチセンサーは良くも悪くもかなり敏感
AH-C830NCWはタッチ操作が可能。主な操作方法は以下の通りです。
操作項目 | 操作方法 |
再生/停止 | R側を1タップ |
曲送り | R側を2タップ |
曲戻し | R側を3タップ |
ノイキャン/外音取り込み/オフ切り替え | L側を1タップ |
電話を受ける | 着信中にR or Lを2タップ |
着信拒否 | 着信中にR or Lを長押し |
電話を切る | 通話中にR or Lを2タップ |
音声アシスタント起動 | R側を1タップ後、長押し |
ペアリングモード | L側を1タップ後、長押し |
実際に使ってみるとタッチセンサーの感度は非常に良く、反応も機敏。ラグも少なく快適な操作が可能......なのですが、感度が良いのとタッチセンサーの範囲が意外と広いことが相まって、誤操作が発生しやすいです。
イヤホンのスティック部分の先端を持たないと、タッチセンサーが反応してしまいます。特にケースからイヤホンを取り出して装着するまでに、ノイキャン/外音取り込み/オフの切り替わってしまうことが多いです。
その他:アプリなし/再生時間が短め
AH-C830NCWは専用アプリがないので、タッチコントロールの設定変更やイコライザー機能はありません。また、再生時間はアクティブ・ノイズキャンセリングを使用してイヤホンのみ4.8時間 / ケース込19時間と少々心もとないです。

充電は有線(Type-C)のみで、ワイヤレス充電は非対応
一方、GOOGLE FAST PAIRに対応しているので、対応しているAndroid端末ならペアリングは簡単。接続時にポップアップでバッテリー残量も表示されます。
DENON AH-C830NCWの仕様
AH-C830NCWの仕様は以下の通りです。
AH-C830NCW | |
ドライバー | 11×10mm(楕円形)ダイナミックドライバー |
ノイズキャンセリング | あり(2マイク・ハイブリッド・アクティブ・ノイズキャンセリング) |
周囲音ミックス(外音取り込み)機能 | あり |
通話機能 | あり(3マイク、ビームフォーミング&エコーキャンセル機能搭載) |
Bluetooth | Ver. 5.0 |
対応コーデック | SBC / AAC |
バッテリー駆動時間 (ノイズキャンセリングON) | イヤホンのみ6時間 / ケース込み24時間 |
バッテリー駆動時間 (ノイズキャンセリングOFF) | イヤホンのみ4.8時間 / ケース込み19時間 |
充電時間(充電ケース) | 約2時間 |
防滴性能 | IPX4 |
本体外形寸法 | 22 × 35 × 23mm |
充電ケース外形寸法 | 58 × 46 × 30mm |
質量 | 本体 5.3g × 2 / 充電ケース 43g |
その他 | Google Fast Pair、タッチコントロール、装着検出機能対応 |
DENON AH-C830NCWレビューまとめ:いろいろ気になるが、音質が良すぎてそんなことどうでもいい
AH-C830NCWのレビューをお届けしました。製品のポイントをまとめると、以下の通りです。
ポイント
✅音質は抜群に良い。音場もかなり広め
✅装着感がかなり快適。耳疲れしにくい
✅通話品質・外音取り込みは○
✅ノイキャンは高音の残りが気になる
✅タッチコントロールは敏感過ぎる
✅ワイヤレス充電非対応。再生時間も短め
✅アプリ非対応
AH-C830NCWの総評としては、「音質に極振りして2万円以下にまとめたTWSイヤホン」です。
ノイキャン性能が中途半端、タッチコントロールが敏感過ぎて誤操作してしまう、ワイヤレス充電非対応で再生時間も短め、アプリも非対応と、スマートデバイスとしての評価は価格以下です。しかしながら、音質は完全ワイヤレスイヤホンとしてはハイエンド級に当たる3万円以上の製品と互角に渡り合えるレベルで、音場の広さも素晴らしいです。この音を聴きたいために、些細なことには目を瞑ってついつい手に取ってしまいます。
対応コーデックもSBC /AACのみと地味ですが、そんなことはどうでもいいくらい音質が良いので忘れましょう。AACならハイレゾ級コーデックよりも通信が安定しています。音質派の方には是非手に取ってもらいたい製品です。