スマホの実売台数は、その機種本来の魅力だけでなく、通常より安価に手に入るキャンペーンやセールの影響を強く受けています。
日本では、各キャリアによる回線契約を条件とした「1円スマホ」施策が頻繁に行われており、こうした施策がスマホの実売台数に影響を与えていることは間違いでしょう。
そこで、この記事では、最新のスマホの売れ筋ランキングと、筆者が実際に店舗で確認してきた施策を照らし合わせ、なぜそのスマホが人気なのか読み解いていきたいと思います。
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最新のスマホの売れ筋ランキング
iPhone & Android
スマホやデジタル家電などの実売データを集計している「BCNランキング」の2022年11月14日から11月20日の日次集計データによると、スマートフォン(シリーズ別)の実売台数ランキングは以下の通りです。
1位 iPhone 13(アップル)
2位 iPhone SE(3rd)(アップル)
3位 Pixel 6a(Google)
4位 iPhone 14(アップル)
5位 iPhone 14 Pro(アップル)
6位 Galaxy A53 5G(SAMSUNG)
7位 Xperia Ace III(ソニー)
8位 arrows We(FCNT)
9位 Xperia 10 IV(ソニー)
10位 AQUOS wish2(シャープ)
日本ではiPhoneの人気が高く1,2,4,5位を獲得。ただし、3位に唯一Androidの機種として「Google Pixel 6a」が食い込んでいます。
また、iPhoneについても新型の14シリーズではなく、13やSE(第三世代)が人気となっています。
Androidのみ
同じく「BCNランキング」の2022年11月14日から11月20日の日次集計データによると、Androidスマートフォンの実売台数ランキングは以下の通りです。
1位 Galaxy A53 5G SC-53C(SAMSUNG)
2位 Pixel 6a(au)(Google)
3位 Pixel 6a(Softbank)(Google)
4位 Xperia 10 IV(ソニー)
5位 AQUOS wish2 SH-51C(シャープ)
6位 Pixel 7(au)(Google)
7位 Xperia Ace III SOG08(ソニー)
8位 arrows We FCG01(FCNT)
9位 Xperia Ace III SO-53C(ソニー)
9位 Pixel 7 128GB(Softbank)(Google)
au版とソフトバンク版で合わせて連続16回首位を獲得していた「Google Pixel 6a」が2位に。今年5月に発売された「Galaxy A53 5G」が初の1位を獲得しています。
特に注目してもらいたい点は3つ
今週のランキングで、特に注目してもらいたい点は以下の3つです。
ポイント
① iPhoneは最新の14シリーズではなく、型落ちの13が人気なのか?
② Google Pixel 6aがiPhoneと互角に戦えているのはなぜか?
③ Galaxy A53 5GがPixel 6aからAndroid 1位を奪取できたのはなぜか?
勘の良い方は既にお気づきかもしれませんが、上記のランキングで赤字で記載した機種は、いずれも「1円スマホ」施策が行われている機種です。
より正確に言えば、赤字の機種は通常価格がいずれも5万円台~13万円台の高額な機種にも関わらず、回線契約を条件に「1円スマホ」となっている機種です。逆に黒字は元々の価格が安く、回線契約を条件に1円ないしはそれに近い低価格で販売されている機種です。
元々安い後者が販売台数で上位に来るのは当たり前ですが、前者は大幅な値引きを行う特別な施策により販売台数が大きく伸びていると考えられます。
そこで、筆者が実際に店舗で確認した施策をから、以上の3つの疑問に迫ってみたいと思います。
① iPhoneは最新の14シリーズではなく、型落ちの13が人気なのか?
この答えは単純で、型落ちのiPhone 13が「1円スマホ」となっている一方、最新機種で品薄の14シリーズが「1円スマホ」となっていないからでしょう。また、13無印と14無印に関しては、スペックがあまり変わらないという点も理由として考えられます。
筆者が実際に店舗を複数回って確認したところ、以下の施策が行われていました。
左からソフトバンク、au、ドコモ
キャリアによって最終的な実質負担額が「1円」か「24円」かで異なりますが、ドコモ・au・ソフトバンクがほぼ同様の施策を行っていました。
また、ソフトバンクとそのサブブランドのワイモバイルでは、iPhone 13 miniも1円の対象となっていました。
ソフトバンク
ワイモバイル
現行の法律で回線契約を条件とした割引は税込22,000円に規制されているため、端末自体を割引していることに加え、約2年後の返却で残債支払いが免除されるという三重の割引施策により実質1円(または24円)となっています。
以上のauの例を具体的に書くと、以下の通りとなります。
①当店独自値引:▲18,700円
②5G MNP おトク割:▲3,300円
③対象機種限定特典:▲42,974円
④スマホトクするプログラム:▲62,520円
※約2年で返却して適用
auでのiPhone 13(128GB)の通常価格は127,495円ですが、以上の割引および残債免除で実質負担額が1円となります。
①②が回線契約を条件とした割引(法律に違反しない合計22,000円)で、③④は機種そのものに適用される割引です。つまり回線契約をせず単体購入しても84,521円、約2年で返却すれば22,001円です。
また、同様の施策がiPhone SE(第三世代)でも行われており、筆者が確認した店舗(エディオン)では更に25,000ポイントの還元もありました。
左からソフトバンク、au、ドコモ
同様の例は、Twitter上でも多数報告されており、全国各地で行われているようです。
また、こうした施策は、携帯ショップよりも大型家電量販店や、大型ショッピングモール内の催事(携帯ショップによる出張販売)で休日に行われる傾向にあります。
② Google Pixel 6aがiPhoneと互角に戦えているのはなぜか?
これも答えは単純で、auとソフトバンクがPixel 6aを「1円スマホ」として販売しており、かつそれが常態化しているからです。なお、ドコモはそもそもPixelシリーズを取り扱っていません。
左からソフトバンク、au
その他には、Appleと並ぶGoogleブランドへの信頼や、独自機能「消しゴムマジック」「リアルタイム文字起こし・翻訳」等の魅力も理由として考えられますが、1円販売に話を戻します。
auを例に出すと、1円販売の内訳は以下の通りです。
機種通常価格:53,270円
①当店独自値引:▲18,700円
②5G MNP おトク割:▲3,300円
③対象機種限定特典:▲5,829円
④スマホトクするプログラム:▲25,440円
※約2年で返却して適用
iPhoneの例と同様に、以上の仕組みで実質1円となります。
この土日で筆者が確認しただけでも、複数個所で1円販売が行われていましたが、この施策はPixel6 aおよびPixel 7で発売直後から継続して行われているものです。
売れ筋Androidランキングで、Pixel6 aが16回連続で首位を獲得する圧倒的人気を得ていたのは、このことが最大の理由として考えられるでしょう。
また、ソフトバンクおよびワイモバイルでは、最新機種の「Google Pixel 7」も1円または24円となっていました。
ソフトバンク
ワイモバイル
③ Galaxy A53 5GがPixel 6aからAndroid 1位を奪取できたのはなぜか?
これも最大の理由として「1円スマホ」としての販売が挙げられるでしょう。しかも2年後の返却が不要です。
筆者も実際に店舗で確認しましたが、同様の例をTwitterで多数確認することができ、全国的に行われているようです。
ドコモ
これはドコモの施策で、内訳は以下の通りです。
通常価格:59,400円
①店頭独自割引:▲37,399円
②MNP・新規限定割引:▲22,000円
iPhoneやPixelの例よりもシンプルで、返却による残債免除なく1円となる施策です。もちろん①については端末そのものが割引となっているため、回線契約なく適用されます。
他の例と同様に、大型家電量販店や、大型ショッピングモール内の催事(携帯ショップによる出張販売)で行われていると見られますが、休日限定ではなく11月18日~11月30日までの限定価格となっており、11月中は人気が持続すると思われます。
なお、ソフトバンクでは「Xperia 10 IV(通常価格:74,880円)」の返却不要1円(端末のみだと22,001円)販売が常態化しており、同じくTOP10の常連機種となっています。
▽詳細は以下の記事で!
まとめ:高額スマホが1円で手に入るのは今だけかも
以上の通り、スマホの実売台数はその機種そのものの魅力だけでなく、キャリアの「1円スマホ」施策に大きく影響を受けていることが考えられます。
特にiPhone 13のように通常価格で10万円を超える製品も1円の対象となっており、人気機種の中心となっています。
しかし、こうした極端な割り引きを行う施策は、企業体力が比較的ない格安SIM業者が行うのは難しく、健全な競争を妨げているという見方もあります。
10月には、こうした点を問題視した公正取引委員会が強制調査に乗り出したという報道もありました。本来高額なスマホが1円で手に入るのは今のうちだけかもしれません。
▽参考